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雨降ってなんとやら

Twitterだけではまとまり切らないことを長文にしてまとめる用。

【第十四幕ネタバレ無】スタミュ OVA第二巻先行上映会&スタッフトーク 東京20:30~レポまとめ

イベント等レポ スタミュ

スタッフトークの内容を、聞きながら取ったメモと記憶を頼りにまとめました。途中でメモを取るのを諦めた部分や口調違い、曖昧な部分もありますので、他の方のレポなども参考にしてください。

トークの合間合間でのスタッフさん同士の会話も仲の良さが伝わってきてほっこりしたり笑わせていただいたりしたので、その辺りも可能な限りレポしています。

なお、こちらの記事はネタバレ無バージョンです。第十四幕のネタバレになるような話を避けるため、質問コーナーの内容を中心に載せています(質問コーナーのネタバレ箇所も避けています)。

ネタバレ有バージョンは別途載せています。

 

登壇されたスタッフさんは以下、このように表記していきます。

 

監督・多田俊介さん:監督

シリーズ構成・ハラダサヤカさん:ハラダさん

作詞家・くまのきよみさん:くまのさん

総合プロデューサー・杉本美佳さん:杉本P

トークショー司会&音楽プロデューサー・藤平直孝さん:藤平P

 

第十三幕・十四幕終了後、藤平Pが登壇。藤平Pの紹介で、他の四人も登壇。監督とくまのさんはイベント公式グッズの星のペンライトを持っていました。

 

OVA本編についての話。

監督「『また来年』で終わった一期の締めくくりとしてのOVA。華桜会の卒業まで描くことで、十三幕・十四幕で一区切りすることが出来たので、そこで満足できるような内容にした。二期は更にそこから先を描いて行くことになります」

ハラダさんのコメントはネタバレを含むので割愛。

 くまのさん「十三幕は新曲だらけ。OVAのEDはチーム違いで替え歌にして、大切な先輩を送り出す歌として先輩を思う歌にしました。皆さんには感謝の思いでいっぱい。OPをどうするか考えた時、スタミュのキャラクターを見て、それぞれのキャラクターにカラーがあって、色んな色が散りばめられてスタミュが出来ているんだと考えた時にサビの『夢はナニ・イロ』が浮かんだ。『フィナーレは僕たちの胸に』は、初めから暁からスタートして次に鳳、という指示があって大変だった(テレビアニメ一期だとそのような指示はなかったので)。一期の時も、ミュージカルパートで『ここを使うんだ』『ここでサティ…⁈』と驚いた」

監督「『SATISFY』は『スタミュ』に番組として爆発力が欲しかったので、二番の歌詞をあそこに持って来ました」

くまのさん「Tシャツにもなりましたもんね!」

(場内拍手)

藤平P「ここで拍手起きるんですね……⁈」

 

OVA第二巻特典について

ブックレット特典の対談企画について

ハラダさん「星谷・那雪・ゆうき・つむぎ対談は、ゆうきとつむぎの、team鳳のそれぞれのメンバーの印象なんかのガールズトークに、男二人が翻弄されている感じです。

海斗・遥斗・辰己・申渡対談は、とってもとっても月皇がやり辛そう。お兄さんと他二人は好き勝手やってます。海斗・辰己・申渡の三人は付き合いが長くて気心も知れている者同士なので、三人同士の会話は書いていて楽しいです。辰己・申渡から遥斗に孫弟子目線の質問をぐいぐいしたりもします。今まで聞かれなかったような情報も出せました」

 

特典ドラマCDについて

ハラダさん「すごく楽しかったです」

 

in 漣家について

ハラダさん「漣家の道場・家庭事情を描いています。鳳が凄い手土産を持って行く。バカやってる高校生の華桜会を描けました」

in 空港について

ハラダさん「第十一幕でteam鳳が出掛けた遥斗の主演ミュージカルのパンフ撮影の実習の際、遥斗が星谷以外のteam鳳のメンバーとどんな話をしたのか、ということがドラマCDやブックレットで出ます。月皇もびっくりな会話がありました」

 

おすすめの台詞は?という質問に

ハラダさん「in 漣家だと、貴重な鳳のツッコミ『まだあるの?』という台詞。俺が突っ込まざるを得なかった、という感じです。諏訪部さんの芝居もあっていい感じ。

in 空港は、二回目の『海斗』ですね。役者としての先輩ではなく、本当の兄としての『海斗』が聞けます」

藤平P「発売前で会場の方誰もドラマCD聞いてないのにピンポイントすぎますね」

杉本P「そうですよね、もっと大まかに語れと」

質問コーナー

(このコーナーについては可能な限り解答元も明記していきます)

藤平P「言えないことはノーと言います!僕笑わせに行きますからね!」

杉本P「なんでハードル上げるの?」

Q.天花寺は私服が和装のイメージが強いですが、パンツもふんどしですか。

A.監督「キャラクターデザインという作業は、目に見える表面的な部分だけでなく体のデッサンやラフ画なんかも描くのですが、デッサンにふんどしを描いている人はいませんでした」

杉本P「そんなラフ画回って来た事はないですね」

結論:天花寺はふんどしではない

 Q.星谷君は憧れの人にいつ気付くんですか?気付けるんですか?

A.監督「スタミュの方向性を決める重要な質問ですね。スタミュは出したネタは全て拾っていくという稀有なアニメらしいですが、星谷も……」

 ハラダさん「一話のあのアバンを作ったからには気付かせたいですね」

 監督「多分どっかで気付く。二期なのか三期なのか四期なのか五期なのか分かりまんが……」

 杉本P「三期まだ決まってませんからね⁈」

 藤平P「『三期は』ということは四期は……⁈」

 (会場ここで拍手)

Q.第十三幕で星谷・那雪のメガネが似ていたのには何か理由があるんでしょうか?二人で買い物にいったとかでしょうか?

A.あれは天花寺のメガネのストック。二人が掛けていたから天花寺はメガネを掛けていなかった。同じ人のメガネだからデザインが似ていた。

 藤平P「天花寺メガネ何十本も持ってそう……」

 ハラダさん「でも星谷と那雪は一緒に買い物はよくすると思います」

 結論:あれは天花寺のストックメガネ。

Q.月皇君のパトロンになる方法を教えてください

 杉本P「いろんな人がいますねえ……」

 藤平P「(結婚したい人とかもいますよね、という話になり)我々は結婚相談所じゃないですからね!」

A.パトロンとかは月皇は嫌がりそう。プロになった時に一番のファンになるのが、彼にとってのパトロン。公演が決まったら何回も通うとか。出待ちとかお金を渡されたりとかは嫌がると思う。

 その中で遥斗は月皇家に稼いだお金を入れているのか?という話に。月皇家はお金があるので多分入れてない。その流れで何故か空閑家にお金を入れる遥斗の話になる。

 ハラダさん「遥斗からのお金めっちゃ怖い」「裏がありそう」(これはハラダさんではなかったかも……)

 もちろん空閑は、遥斗からお金を渡されても受け取らない。

Q.ハラダさんがTwitterでツイートしていた「天花寺、ちょっとジャンプしてみろよ」の詳細を教えてください。

杉本P「監督とハラダさんにTwitterを始めていただいたのは、『スタミュ』をなんとかして広めるため。二人ともTwitter見もしないしやれもしないのに、初めていただきました」

初めの頃は(今でも?)ツイートのやり方を杉本Pにいちいち確認していたそうです。可愛い。

天花寺、ちょっとジャンプしてみろよ」が生まれたのは、札幌の上映会・スタッフトークのために北海道に行った時、回転寿司で打ち合わせなどをしていた時に「天花寺・空閑・回転寿司」の組み合わせがなんだか楽しくなってしまった生まれた妄想。

(この時、監督か杉本Pがこれから二期の本格的な作業が始まって監督や作画担当が痩せていく……と仰っていました)

 

空閑が天花寺を回転寿司に連れて行き、天花寺に皿制覇させて自分は天花寺が注文した分のうち一貫を自分で食べる。「天花寺、この皿の色知ってるか?」とか言う。

天花寺、ちょっとジャンプしてみろよ」は、「in 空閑家」のような空閑なりの茶目っ気。天花寺は小銭をじゃらじゃら持ち歩いたりしないので、ジャンプすると服の中からブラックカードがバラバラーっといっぱい出て来る。そして天花寺は空閑にたかられているとも気付かず、空閑にいいものを食べさせている。

 空閑からの誘い文句は「天花寺、(バイクの)後ろに乗せてやる」「ダチを後ろに乗せるのは初めてだ」。天花寺は「ダチ」と言われると弱い。

 星谷・那雪は天花寺がたかられていることに気付いてハラハラしているし、虎石は遠くから見ながら「梨園の貴公子にたかるなんてマジウケる~ww」と爆笑しているし、申渡は「大丈夫なんでしょうか……」と心配している。

Q.戌峰は両親からワンワン軒を継ぐよう言われたらどうしますか?

A.ハラダさん「むしろ両親が継がせません。どうかミュージカル俳優になってください!という感じ」

 戌峰の両親はワンワン軒の「オーナー」で、本場の中国の方を料理人として雇っている。

Q.卯川は寝る時どんな服装ですか?

A.監督「描いたことはないんですけど、僕からオーダーするなら普通にボタンのパジャマにします」

寮はトイレ・風呂・洗濯共用なので、夜の寮の廊下でパジャマにスリッパの可愛い卯川が見られるかもしれない。(実際に描けるかどうかは分からない、とのこと)

Q.虎石はなぜ男友達が多いのでしょうか?男に嫌われるタイプなのでは?

A.藤平P「虎石は男から見てもいいやつですよ!」

監督(?)「虎石は男には嫌われませんね」

もちろん彼女を取られたとかになったら話は別。

ハラダさん「スタミュは各キャラクター毎での関係性をきちんと決めているんですが、星谷・虎石は各チームの外交役のようなもので、チームメイト・友達で接し方の線引きをしていません」

Q.鳳と柊が双子ということを知っている人はいますか?

A.現役生の中では誰も知らない。第九幕の回想時点だと、二人からしても言って回りたいことでもなかった。

二人きりの時でも基本的に苗字で呼び合う。そっちで慣れてしまった。

Q.一年生の鳳はローファーを履いていますが、三年の鳳は紐の革靴を履いています。この違いは何でしょうか?華桜会のドレスコートのようなものですか?

(なんて細かいことに気付くんだ、とスタッフも場内も騒然)

A.ドレスコードと言うより、自分を主張できる立場になったということの現れ。見れば分かる通り華桜会ドレスコードは無い。

この時、楪の格好がだいぶ奇抜、と言う話になり、

 

監督「楪は、鳳や柊や漣が男らしいスタンダードなカッコよさだったので、そうじゃないカッコよさを狙って、キャラクターデザインの渡邊さんに『とりあえず高見沢で』とオーダーしました」

 

高見沢で、と監督が言った時場内大爆笑でしたが皆納得している様子でした。

Q.監督に質問です。ミュージカルパートの超演出はどうやって考えていますか?

A.監督「(超演出とは言われるが)普通にナチュラルに、カッコいいと思ってやってる。第一幕の『我ら、綾薙学園華桜会』のコンテを切った時、『これはアイドルがステージに立って踊るのとは違う、ミュージカルなんだ』『劇的なものなんだ』『内面を表す映像が必要なんだ』ということをスタッフに伝えたところ、他のミュージカルパート担当の演出達も全員放っておいてもいわゆる超演出をやり始めました」

この時監督から、華桜会のご登校を出迎えているのは二年生だという話が出ました。

 最後の挨拶

最後にそれぞれから挨拶。確実にこれは言ってた、というところだけ。

この段階でかなりメモ取る力が尽きてたので、他の方のレポも参考にしてください。

 

監督「熱心に応援していただけるファンの皆さんとこうして交流できる場は我々にとっても楽しみ。仕事とは思ってないですからね!二期でもこういうことが出来るよう、応援していただけたらと思います」

 

ハラダさん「現在二期のシナリオで佳境に近い事をしている時期で、特に鳳と遥斗の話をしていると込み上げて来るものがあります。鳳に何を言わせるかで半分くらい頭がいっぱい。今情緒不安定になってやっていることが来年形になっているので、楽しみにしていてください」

 

くまのさん「皆さんの全部見終わった後の溜息のような声を聞いて、ぐっとくるものがありました。実りある二巻になったと思います。二期でも是非(藤平Pの方を見ながら)、ハニトラやキラメキラキラ☆みたいな楽しいのをやらせてもらったらいいなと思ってます」

 

杉本Pのコメントはややネタバレ含むので割愛。

 

藤平P「沢山の楽曲を生み出させていただきました。是非、音楽も楽しんでほしいです。フルバージョンも含めてのミュージカルソングなので、是非フルでも聞いてください。僕達の五人でチーム多田・華桜会のようなもの。僕達の後ろに本当に沢山のスタッフたちがいます。僕らが止まったら全体が止まってしまう。絶対最後まで走り続けるので、応援していただければと思います」

 

 この挨拶でトークショーは終了。

 上映会、そしてトークショーと、スタッフの皆さんの愛と熱がたくさん感じられました。制作陣がスタミュの事を沢山愛してくれていることが伝わるから、スタミュと言うコンテンツは温かいと感じる事が出来るのかな、と思いました。

拙いレポでしたが、ありがとうございました。

『キンプリ』の話・第三部「映画館で見る映画」としての『キンプリ』、まとめ

『キンプリ』の話(全三部) キッズアニメ

 第三部です。映画としての『キンプリ』の話をします。

そしてこの記事は第三部なので、先に第一部と第二部を読んだ方が分かりやすいと思います。「カテゴリー」の「『キンプリ』の話」のところからどうぞ。

 

 恐らく「応援上映」という上映形態については各所で語り尽くされている気がしますし、私も以前Privatter上に応援上映のレポートついでにそんな感じの話をしました。なので今回はそちらの文章の一部サルベージになります。

 ちなみに元の文章はこちらになります。Privatterに掲載していますが全体公開設定にしているのでどなたでもご覧いただけます。

privatter.net

  応援上映の概要や実際の空気感についてはだいたいこちらに書いてあるので、先に読んでいただいた方がいいかもしれません。

 また、応援上映の公式PVもこちらに貼っておきます。

www.youtube.com

アトラクションとしての映画、アトラクションとしての『キンプリ』

ascii.jp

  このインタビュー記事で西さんが語っているように、「応援上映会」は『プリティーリズム』の最初の劇場版『劇場版プリティーリズム・オールスターセレクション プリズムショー☆ベストテン』から『プリパラ』の映画までずっと続けられている催しです。

 

「映画」と「アトラクション」という言葉がすぐに結びつく人がどれくらいいるのかは分かりませんが、映画館のアトラクション化はどんどん進んでいます。例えば、もうすっかり当たり前になった3D上映、映画に合わせて客席が動いたりするMX4D、超大画面と迫力の音響で映画を楽しむことが出来るIMAX ……映画のスペクタクル化が進んでいることもあって、映画館に行けばアトラクション感覚で映画を楽しむことが出来る時代なわけです。

 しかし、そう言ったアトラクション上映であっても基本的に観客は静かにしているのがルールです。笑い声が起こることはあるでしょう、けれど上映中に声を出してキャラクターを応援したり、ましてやサイリウムを振るなどご法度です。

 そして応援上映に最も近い形態の上映形式が、上映中に叫んでOKの「絶叫上映」です。応援上映の先祖として西さんが挙げており、アニメ映画や一部実写映画にて、一部上映館で実施されることがあります。しかしそれでも、『プリティーリズム』『プリパラ』『キンプリ』のように、多くの上映館で応援上映を行う映画はほとんどありません。

 

『キンプリ』は、『プリティーリズム』からの伝統に則り、更にとても応援上映向きである映画です。なぜなら、菱田監督たちがそのように映画を作ったからです。初めからアトラクションとしても作られている映画なのです。

 そして応援上映の凄い所は、普通のシアターでアトラクション上映ができるというところです。3D上映も、MX4Dも、IMAXも、それ専用のシアターでないと上映できません。ところが『キンプリ』の場合は基本的に2D上映しかありません。特別な音響設備を持っている劇場は音響のレベルを上げて上映することもありますが、『キンプリ』の場合は基本的に2Dデジタル上映が出来る設備を持っている映画館でならどこででも上映出来て、どこででも応援上映が出来るのです。今日び新作を公開するような映画館は必ず2Dデジタル上映が出来る設備を整えています。

 つまり、応援上映というアトラクション上映を行うために必要な特別な設備はないのです。「どこの劇場であっても楽しく、新しい感覚で映画を楽しむことが出来る」……これが応援上映の最大の強みなのではないでしょうか。

 そして実際に応援上映は大きな話題となり、めざましテレビ等のテレビ番組で取り上げられるまでになりました。

「応援上映」も「絶叫上映」も、「映画館で見る映画は静かにみるもの」という固定概念を覆す上映形態です。「絶叫上映」はネット上では話題になりますがテレビではほとんど取り上げられることはありません。しかし今回『キンプリ』によって「応援上映」が大きく取り上げられることになったのは、「応援上映」が特殊な設備を必要とせず、どんな映画館であっても開催可能な上映形態だからではないでしょうか。

 

 とは言え正直なところ、どうして上映2ヶ月目3ヵ月目になった辺りで「応援上映」がこんなに話題になったのか私には分かりません。物珍しさか、はたまた他の何かか。しかしTwitter上を初めとした口コミで「応援上映」が話題になり、動員数が公開3週目で急激に増え、反響を受けて初め3週間限定の予定だった上映期間が延長し、ここぞとばかりに公式側が応援上映のPVを作り……と、応援上映の話題性に上手く乗っかった公式側のプロモーション上手も一因な気がします。

 渋谷のスクランブル交差点の街頭ビジョンで応援上映のCMが流れたのも話題になりましたね。私は感動で足が震えて倒れそうになりました。

 

 映画館は最近、人を呼び込めないという事で悩んでいます。そんな中で『キンプリ』は、特別な設備がなくても開催可能な特別な上映形態「応援上映」の可能性を世間に知らしめたという意味で日本の映画界になかなか意義深いことをしてのけたのではないでしょうか。

 そこまで大仰な話でなくても、「応援上映」の活況をみた映画業界の人が、映画館に人を呼ぶためのヒントを何か掴むことが出来たらいいなと、映画館で映画を見るのが好きな人間としては思います。

結局『キンプリ』とは「何」なのか

 まず初めにこちらの動画をご覧ください。

www.nicovideo.jp

  これは『キンプリ』公開前である2015年12月23日に菱田監督、一条シン役の寺島淳太さん、涼野ユウ役の内田雄馬さんが出演したニコ生にて菱田監督がずっと応援して来たファン――プリズムエリート達に向けて読み上げた「手紙」です。

 

 第一部、第二部にて『キンプリ』がどういう状況の中で生まれた作品なのかはお話ししました。スタッフ全員が背水の陣で挑んだ『キンプリ』。プリズムエリート達はその思いを受け取り、SNSで必死になって発信し続けました。「キンプリはいいぞ」「キンプリを見てください」、と。

『キンプリ』のヒットの要因として、よく「ファンの口コミ」「熱心な布教活動」が挙げられますが、これは本当にその通りだと思います。上映初日、学校行事で初日に見に行けなかった私がTL上で散見した「やばい」「キンプリはいいぞ」「キンプリを見てください」、そして「もう一回見なきゃ……」の言葉の数々。制作に携わったスタッフの方がそういった感想を見て思わず「何かとんでもないものを作ってしまったのでは」とツイートしてしまうほどのエリート達の反応。何かとんでもない事が起きているな、と思いました。

 

 そして『キンプリ』は、作り手、そして元からのファン達の想像を遥かに超えるヒットを記録しました。つい先日発売されたサウンドトラック。6月にDVD・Blu-rayの発売も決定。4月27日に発表された、興行収入5.3億円という数字。動員数は30万人突破、様々なグッズメーカーが『キンプリ』グッズの企画・発売を発表し、コラボショップやコラボカフェといったイベントも続々発表・開催されます。

 更に9月11日には東京国際フォーラムホールCにてイベント発表。内容はホールCのキャパいっぱい1500人による『キンプリ』応援上映と、Over the Rainbowのキャストである柿原徹也さん、前野智昭さん、増田俊樹さんの3人によるトークショー。『キンプリ』の舞台挨拶やイベントは、スタッフなら菱田監督やプロデューサーの西さん依田さん、キャラクターデザインの松浦さん、キャストはシン役寺島さんを初めとした新世代キャラクターのキャストが中心。『レインボーライブ』の頃からOver the Rainbowだった柿原さんたちは、ホームページ上や劇場パンフに掲載されるコメントはあれどイベントには登壇していませんでした。それがいよいよ、『キンプリ』のために用意された場でOver the Rainbowの3人が揃うわけです。

 初めから予定されていたわけでは無い展開が、プリズムエリート達が劇場に何度も足を運んで払ったお金から生み出されています。それもちゃんと、エリート達の思いに応える形で。貰った愛を愛で返すような形で。

 

 私は昨年になってから『レインボーライブ』を見たという、『プリティーリズム』を好きな方たちの中ではまだまだ新参です。正直プリズムエリートと名乗ることすらおこがましいです。でもこれが泣かずにいられるかという話です。現に今書きながら泣いてます。多分iTunesがGet music! とドラマチックLOVEを連続で流したせいだと思います。まさしく最高最強の気分です。

 きっと、『プリティーリズム・オーロラドリーム』の頃から『プリティーリズム』を応援して来た方々からすればこの感動は私などの比ではないのでしょう。

 

『キンプリ』は「キッズ向けコンテンツ原作もの」としても「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」としても前例がない事をやってのけてしまいました。ミニシアター枠から始まって5月に入ろうとする今なお上映館数を伸ばし続け、3ヵ月以上に渡るロングランや上映37日目にして最高動員数を記録するというのも、映画として見てもとんでもない作品です。

 

 そして少しずつ、『キンプリ』を見た多くの人が待ち望んでいるであろう「続編」への光が見え始めていることが、監督達の各種媒体でのコメントからも伝わってきます。私も今から続きを見たくて堪りません。

 8月・12月には『レインボーライブ』のBlu-rayボックスの発売も予定されています。

 

 今改めてOver The Rainbowの「athletic core」を聞いてみると、その歌詞がまさしく『キンプリ』にかけた菱田監督達の思い、そして『キンプリ』が上映開始後に立ち向かった苦境、エリート達の力と共にそれを乗り越えていく様のように見えます。「athletic core」の初出は『レインボーライブ』最終話なので、この時点で『キンプリ』の構想があったわけではありません。しかし、苦境を誰かと共に乗り越え、でかい未来を組み替えて希望を目指すという思いをオバレが堂々と歌い上げるこの歌はプリズムの煌めきに溢れています。これはもう『キンプリ』が今起こしている奇跡がまさしくプリズムの煌めきによるものだからと言ってもいいのではないのでしょうか。

 もしかしたらプリズムエリート以外は気付いていなかっただけで、この世界は実質プリティーリズムだったのかもしれません。

 

 ……とまあそれはともかく、『キンプリ』が凄まじい力を持っている作品だということは間違いありません。

 作品を見た人の心を強く揺さぶる力。

 作品を見た人に「世界が輝いて見える」と感じさせるだけの力。

 辛く厳しい世界だからこそ、その世界を輝かせるプリズムショーの力。

 そして私がこのシリーズの記事で語ってきた、『キンプリ』というコンテンツの背景そのものが持つ圧倒的ドラマ性。

 作品が持つ力が現実世界にまで影響を及ぼすこの作品の存在を「奇跡」と呼ばずしてなんと呼ぶのでしょうか。『キンプリ』は「奇跡」です。「奇跡」であると同時に、コンテンツを心から愛する人たちがいたからこそ作り出すことが出来た、「生まれるべくして生まれた奇跡」なのです。もしかしたら『キンプリ』は、この世界にプリズムの煌めきを広めるためにこの世界に届いたgiftなのかもしれません。

 

 『キンプリ』は奇跡。

 『キンプリ』はプリズムの煌めき。

 『キンプリ』はgift。

 

 ここまでの記事を書いて、強くそう感じました。実際書きながら何回か泣いていました。『キンプリ』の凄いところは応援上映だけじゃないんだぞ!ということを言いたくて、沢山の人に知ってもらいたくて記事を書き始めたらとんでもない長さになってしまいました。

 研究不足や言葉足らずな点もあったかと思いますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

『キンプリ』の話・第二部「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」として見る『キンプリ』

『キンプリ』の話(全三部) キッズアニメ

 『キンプリ』の話・第二部です。

 この話は第二部なので、第一部を読んでから読んだ方が分かりやすいかと思います。第一部はカテゴリーの「『キンプリ』の話」のところから読むことが出来ます。

 

 第一部の記事を書いている途中、2016年4月27日(水)にて開催された菱田監督らによるトークイベント「プリズムエリートの二次会」にて「興行収入5億円」というニュースが発表されて開いた口が塞がりませんでした。ついこの間、3月9日のサンキュー♡上映会で3億円突破と発表されたばかりだったような気がしていたのですが、なんだかとんでもないコンテンツと出会ってしまったと思いました。

 それもこれも、2015年初頭頃の私に『プリティーリズム・レインボーライブ』の視聴意欲を起こさせてくれたTwitter上のプリズムエリートの皆さんのお陰です。この場を借りてありがとうの代わりに好きって言わせてください。

 さて、第一部では「キッズ向けコンテンツ原作」としての『キンプリ』の話をしました。第二部では「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」としての『キンプリ』の話をします。

 『キンプリ』は「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」としては非常に異質なのです。

 

「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」とは

 まず、「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」について。

 この「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」というのは私の造語ですが、もしかしたら私が知らないだけで既にこの言葉を使用している人が私より先にいるかもしれません。もしいたらごめんなさい。

 「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」とは、主に中学・高校生以上の女性をターゲットにした、歌う男性キャラクターがコンテンツの中心になっているコンテンツのこと全般を指します。私はこの手のコンテンツに明るくないのですが、いわゆる「アイドルもの」が大半を占めている印象を受けます。アイドルではなくバンドや役者だったり、アニメ作品そのものがミュージカルだったり、様々な形態で存在していますが、この「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」のほとんどに共通しているのは「中高生以上の女性がターゲットである」ということです。

 しかし、私が「女性向け歌ものコンテンツ」とは言わずに「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」と表記することにしたのには、いくつか理由があります。

 まず、菱田監督自身が『キンプリ』を「女性向け」としては考えていないという点。そして、女性をターゲットにしつつ男性ファンの存在を視野に入れているコンテンツも存在しているためです。

 

「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」のプラットフォームの形は様々ですが、基本的にゲーム(コンシューマーゲームソーシャルゲーム問わず)やアニメ、あるいはCD・アルバムそのものです。いずれも初めから中高生以上がターゲットなので、メディアやグッズ、イベント展開などもその層を意識したものになります。

 

『KING OF PRISM』という『プリティーリズム』から生まれた新たなコンテンツ

 とあるインタビュー記事にて、菱田監督と依田さんがこのように語っています。

 

菱田:ただ今回作っているのは『プリティーリズム』って言われると『プリティーリズム』なんですけど、今回作っているのは『KING OF PRISM』なんですよね。今やらなくちゃいけないのは新しいコンテンツを作り上げることなんです。

 

依田:僕も『プリティーリズム』は良い意味で引きずりたく無くて。『劇場版プリパラ み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』で菱田さんが引導を渡してくれたので、『プリティーリズム』は女児アニメとしてはきれいに完結した作品なんです。なので、またここが新たなスタート地点として作っています。

 

菱田:今回は新しいコンテンツとして見て欲しいですね。

引用元記事

www.animatetimes.com

  『キンプリ』は女児向けアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』を原作とした作品でありながら、新しいコンテンツなのです。

 そして『プリティーリズム』から『KING OF PRISM』になるにあたって、「女児向けコンテンツ」から「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」へとシフトしたことになります。

 個人的にそれを一番最初に意識することになったのは、『キンプリ』のフライヤーが最初に配布された場所が2015年11月に開催されたイベント「アニメイト ガールズフェスティバル」(以下「AGF」)のエイベックスブースだった点でしょうか。

 AGFは年に一回開催され、その名の通り女性向けコンテンツが一堂に会するイベントで、毎年非常に盛況なようです。ようです、という曖昧な表現なのは、私がAGFに行ったのは2015年のAGFが初めてだったからです。目当ては『キンプリ』のフライヤーではなく『SHOW BY ROCK!!』と『スタミュ』の物販だったのですが、結果的に『キンプリ』のフライヤーももらってくることになりました。

 フライヤーを貰った時、『キンプリ』は本当に女児向けじゃない作品なんだな、とぼんやりとではありますが思いました。Over The Rainbowの3人は『レインボーライブ』の頃から登場しており、この時点で女性ファンの存在は意識していたでしょう。とは言え、2014年12月に開催された『プリパラ&プリティーリズム クリスマス☆パーティー』で公開されたHiro×Kojiの「pride」、2015年3月に公開された『劇場版プリパラ み〜んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』の「ルート4 胸キュン!プリズムボーイズツアー」のように、映像作品として登場する際は一応女児向けの体裁は取っていました。(ルート4は毎週金曜の最終上映回限定上映でしたが……)

 それが『キンプリ』でとうとう「女児向け」であることをやめたのです。詳しくは第一部で述べましたが、『プリティーリズム』の後継シリーズである『プリパラ』との競合を避ける以上は「女児向け」であることをやめざるを得ないというのもあります。

 それでは女児向けであることをやめた時、Over The Rainbowが中心にいるコンテンツはどんなコンテンツになるのか? 天才作詞作曲家・神浜コウジ。絶対アイドル・速水ヒロ。ストリートのカリスマ・仁科カヅキ。Over the Rainbowは、そんな3人で構成されたプリズムボーイズユニットです。3人で歌い、踊り、プリズムショーをします。自然と、「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」になるのです。

 

「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」としての『キンプリ』

 それでは本題の、「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」として見た時の『キンプリ』の話をします。

 ますキッズ向けコンテンツを愛好する人間として言いますが、キッズ向けアニメを好んで見ている人の人口は、アニメファンの人たち全体の中で見ると少ないです。そもそも、「子供向けだから」という理由だけで見ない人が多い。多すぎる。いくら面白いよと言っても見ない。声優ファンの人に○○さん出てるよ!と言っても見ない。○○デビュー作だぞ!と言っても見ない。「子供向けだから」「話数が多いから」とか色々言って見ない。そういう人達が何を見ているかって言うと深夜アニメです。

 そういうわけでというわけではないですが、夕方や朝は子供向けアニメの枠で埋まっていることもあり、「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」においてメディアミックス展開の中でテレビアニメを放送する時は、それがどれだけ子供でも見れる内容であったとしても、必ず深夜帯に放送されます。

 それでは『キンプリ』はどうかと言いますと、原作がまず女児向けアニメ。女児向けアニメの男性キャラクターを中心としたスピンオフ作品です。まず女児向けアニメを見ているアニメファンが少ないのに、そこに「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」として参戦したわけです。

 しかも今は「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」の戦国時代と言っても過言ではないくらいです。男性キャラが歌って踊るコンテンツはもうたくさんあります。そして『キンプリ』は、初めて「女児向けアニメ原作」としてその戦国時代に現れたコンテンツなのです。そもそも当時「Over The Rainbow」と聞いてピンとくる人がいったい何人くらいいたんだろうという話です。

 この「知名度の低さ」という大きなハンデを『キンプリ』が公開までにどのようにカバーしようとしていったかといいますと、前売り券の絵柄で話題性を作ったのが最初の仕掛けでした。

www.animatetimes.com

 前売りが5枚綴りというだけでも十分「やばい」のに、その2種類ある絵柄のうち1種が男5人の全裸。その上そのバージョンの前売り券の名前が「正装ver.」。もう意味が分かりません。

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  こちらの記事で「スタッフ」氏による解説がインタビュー形式で紹介されましたが、読んでもやっぱり意味が分かりませんでした。でも数か月後に『キンプリ』本編を見たらその意味が分かってしまったので本当に恐ろしい作品だと思いました。

 ともかく、この前売り券もプロモーション戦略として押し出されたものでした。

 

 更に公式は、『キンプリ』から初めてOver The Rainbowに触れる人もいることから、2015年11月の時点で「90秒でわかる!Over The Rainbow」という動画を公開しました。ただしこの動画、3分06秒あります。

www.youtube.com

 

 また、西さんなどがインタビューなどで答えているように、『キンプリ』は初めからリピーターを獲得することを目標としていました。

ascii.jp

  第一部でも紹介したこちらのインタビュー記事でも触れられているように、製作委員会を構成するはエイベックス・ピクチャーズ、タツノコプロタカラトミーアーツのたった3社。スポンサーもタイアップも何もない。『プリティーリズム』の知名度が高いとは決して言えない。スポンサーもタイアップも何もないからお金もない。しかも世の中、競合相手として女性向けに作られた男性キャラ中心歌ものコンテンツで溢れ返っている。

 そうした本当に「崖っぷち」とも言える状況下。公開前のニコ生で監督がスタッフに無断でファンに宛てた3枚分の手紙を書いて読み上げ「劇場に足を運んでください」とまで言うほどの逼迫ぶり。

 そして『キンプリ』は公開され――ここから先は今この記事を読んでいる皆さんもご存知の通りです。紆余曲折を経て『キンプリ』は興収5億を突破し、名実ともに間違いなく「大ヒットアニメ映画」となりました。

 

 原作の低い知名度。

 資金は少なく、お金も十分に使えない。

 前売りもそんなに売れてない。

 競合コンテンツ多数。

 

 これらの数々のハードルを『キンプリ』がなぜ乗り越える事が出来たのか、これについては第三部「映画館で見る映画としての『キンプリ』」で軽くではありますが触れようと思います。

 とにかく、『キンプリ』は「女性向け歌ものコンテンツ」としてはかなり異質なところからスタートした作品だということがこれで分かってもらえたのではないでしょうか。

 

 第三部、「映画館で見る映画としての『キンプリ』、まとめ」に移ります。

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『キンプリ』の話・第一部「キッズ向けコンテンツ原作もの」として見る『キンプリ』

『キンプリ』の話(全三部) キッズアニメ

 発売されましたね、サントラ。「ドラマチックLOVE」を初めとした名曲揃いで、音質の悪い私のiPod(7年物)で聞くのが申し訳なくなるくらいです。

 さて、今日は『劇場版KING OF PRISM by PrettyRhythm』(以下『キンプリ』)がなぜ凄いのか、という話をしようと思います。

 アイドル論や演出面、応援上映についてはすでにあちこちで『キンプリ』のすごさが語られていますが、「キッズ向けコンテンツ」と「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」の両方の視点から論じたものはあまり見かけないので、サントラ発売を機に自分で書こうと思いました。ついでに以前Privatterで公開した文章の一部サルベージになりますが、「映画館で見る映画」という視点からも『キンプリ』の話をしようと思います。

 そしてお察しの通り文章がめちゃめちゃ長くなったので、三部に分けて掲載することにしました。

 とは言え私は「キッズ向けコンテンツ」についてはそれなりに詳しいつもりでも、「男性キャラ中心歌ものコンテンツ」は『キンプリ』以前には『幕末Rock』『スタミュ』くらいしか縁が無かったため、なにか間違っていたり研究不足な点が多々あるかと思いますのでご了承ください。

 それではまず、「キッズ向けコンテンツ」から見て『キンプリ』はどのような作品なのか、という話をしようと思います。

 

「キッズ向けコンテンツ原作もの」として見た『キンプリ』

「キッズ向けコンテンツ」とは

 当記事における「キッズ向けコンテンツ」とは、「未就学児~中学生を対象として開発・展開されているコンテンツ」のことを指します。

 一口に「キッズ向けコンテンツ」と言っても、多くの分類をすることが出来ますが、大まかには「男児に向けたものか」「女児に向けたものか」「男児・女児両方に向けたものか」に分ける事が出来ます。

 更に、キッズ向けコンテンツの多くは、メディアミックス展開の一環としてテレビアニメを放送します。おもちゃ・ゲーム・カードといった「ホビー」を子供達に、あるいは子供達の親御さんに購入してもらうため(つまり「ホビー」を販促するため)に、そのコンテンツを原作としたテレビアニメを土日の朝・夕方、あるいは平日の夕方に放送する。これが、キッズ向けコンテンツにおける最も普遍的で確実なやり方です。

 キッズ向けアニメの多くはDVDやBlu-rayといった円盤を売ることよりホビーを売ることに重きを置いており、アニメの続編が放送されるかどうかはホビーの売れ行き・展開にかかっていると言っても過言ではありません。

 とは言えキッズ向けアニメにもコンテンツ先行型やホビー先行型、そもそもホビーの販促は目的ではないアニメなど細かな違いもあるのですが、話が逸れるのでここでは割愛します。

 

プリティーリズム・レインボーライブ』について

 さて、『キンプリ』の前作にあたるテレビアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』(2013年4月6日~2014年3月29日)(以下『レインボーライブ』)はアニメ「プリティーリズム」シリーズの三作目であり、「女児向けホビー原作アニメ」になります。

 

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 『レインボーライブ』の主人公は、『キンプリ』にもその姿がちらっと登場した女の子、彩瀬なるちゃん。『キンプリ』の時点では高校生になっていますが、『レインボーライブ』では中学生です。「プリティーリズム」シリーズは全作『キンプリ』同様に菱田正和さんが監督を務めており、『レインボーライブ』も例外ではありません。

 テレビアニメ「プリティーリズム」シリーズの原作は、2010年から2014年まで全国で稼働していた女児向けのアーケードゲームプリティーリズム」です。

 

プリティーリズム』ゲーム公式サイト

http://www.prettyrhythm.jp/game.php

 

 現在稼働中のアーケードゲーム『プリパラ』の前身に当たり、現在でも全国に6店展開している「プリズムストーンショップ」にて遊ぶことが出来ます。

 この「プリティーリズム」の特徴は、「プリズムストーン」と呼ばれる、筐体から排出されるハート型の石を使って、ゲームの中の女の子キャラクターを着せ替える(コーディネートする)ことが出来る、という点です。そしてプレーヤーは、プリズムストーンを使ってコーディネートされた女の子がプリズムショーをする姿を見ながらリズムゲームをします。

 アニメシリーズの作中でもプリズムストーンは、プリズムショーに挑むキャラクター達の着替えに必要なアイテムになります。

 また、『レインボーライブ』に限った話ではありませんが、アーケードゲームを原作としたテレビアニメは実際の稼働状況と連動してコーデや曲を登場させます。それはもちろん、アニメを見ている女の子達に実際にお店に行ってゲームをプレイしてもらうためです。

 例えば、実際にアニメを見て、なるちゃんにこのコーデを着せて、なるちゃんの曲「ハート♥イロ♥トリドリ~ム」でプリズムショーがしたい! と思った女の子がいるとします。放送を見た後で、近所のビックカメライトーヨーカドーのおもちゃ売り場に行ってプリティーリズムをプレイすると、なるちゃんで遊ぶことが出来て、「ハート♥イロ♥トリドリ~ム」でプリズムショーをすることが出来ます。一方で筐体から排出されるプリズムストーンはランダムなので、遊べば遊ぶだけ欲しいコーデを揃えられる可能性は高くなります。

 たくさんの子供達(時には大きいお友達)にたくさん遊んでもらうための原作ホビーとの連動は、ホビー販促を目的とするほとんど全てのキッズ向けアニメにおいて重要なポイントになります。

 

 『レインボーライブ』は女児向けとして放送されていましたが、人間ドラマの濃密さやプリズムショーの見応え等、女児だけでなく大人が見ても面白いと、キッズ向けアニメを好む人達の界隈では非常に評価が高い作品でした。

 『レインボーライブ』はなるちゃんを初めとした女の子キャラクターが物語の中心です。しかし、女性中心の物語の中でもドラマがしっかりと描かれていたのが神浜コウジ・速水ヒロ・仁科カヅキの男性キャラクター達でした。彼らは決して女の子の相手役・恋愛対象としてだけの存在ではありませんでした。『キンプリ』でも僅かに語られた男達のドラマが、ほぼ全編に渡って熱く描かれていました。

 そして凄いのが、プリティーリズムのゲームではコウジもヒロもカヅキも遊べないところです。彼ら3人は、ゲームで遊べるキャラクターではないにも関わらずショーのためにCGモデルが作成され、専用の曲が用意され、そして3人で歌っているのです。

 

 余談ですが、ヒロは筐体仕様CGモデルはゲーム『プリパラ&プリティーリズム プリパラでつかえるおしゃれアイテム1450!』のために制作され、実際にプレイすることが出来ます。

 こちらのゲームは実際のプリティーリズムの筐体のゲームがどんな感じだったのかが分かるようになっているので、気になる方はプレイしてみてはいかがでしょうか。「pride」でプリズムショーが出来るのはもちろん、ヒロが跳ぶはちみつキッスも見れます。全てのプリズムジャンプにきちんとヒロの声が付いています。

 シナリオ執筆は『レインボーライブ』の副シリーズ構成(第1話~39話)・シリーズ構成(第40話~第51話)を務めた坪田文さんで、シナリオもキャラゲーの枠にはとどまらない良作です。

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 そして『キンプリ』は、『レインボーライブ』のコウジ・ヒロ・カヅキの3人のユニット「Over The Rainbow」にスポットを当て新世代のキャラクター・一条シンを主人公に据えた、いわゆる「『レインボーライブ』のスピンオフ作品」という位置付けになります。

 しかも、『プリティーリズム』シリーズとして『キンプリ』を見ると、実は『キンプリ』は初めての、総集編ではない完全新作映画なのです。

 『キンプリ』が製作されるに到るまでの経緯については、『キンプリ』のプロデューサーであるエイベックス・ピクチャーズの西浩子さんへのインタビュー記事で詳しく語られるので、是非読んでみてください。

ascii.jp

 

「キッズ向けコンテンツ原作」としての『キンプリ』

 さて、ここまで「キッズ向けコンテンツ」についてと、『プリティーリズム・レインボーライブ』についての話、もとい、これからの話を理解するための前提知識の説明をしました。いずれにも慣れ親しんでいる人には退屈だったかもしれません。

 ここから本題の「キッズ向けコンテンツ原作という視点から見た時の『キンプリ』」の話に入ります。

 

 さて、『キンプリ』は、キッズ向け・女児向けコンテンツ原作作品として見ると非常に異質な作品です。どう異質なのかと言いますと。

 

「原作ゲームの展開がほぼ終了しており」

「ホビー系タイアップ皆無の」

「男性キャラクターをメインに据えて」

「映像企画・製作会社が企画した」

「3年前(公開当時)に放送終了した女児向けアニメの」

「女児向けではないスピンオフ劇場用映画」

 

 これ、キッズ向けコンテンツ原作アニメ作品としてはやばいところだらけなんです。

少しずつ解説していきます。

 

「原作ゲームの展開がほぼ終了しており」
「ホビー向けタイアップ皆無の」

 キッズ向けアニメにおいて、初めからホビー販促はしないとされているものでない限りこれはとんでもないことです。いやキンプリはキッズ向けに制作されたわけではないのですが。原作のタカラトミーアーツはあくまで協賛として製作委員会への参加。

 先ほども述べた通り、ゲーム「プリティーリズム」は現在プリズムストーンショップでしか稼働していません。普通、ホビー原作アニメの劇場版となると、原作ホビーが映画に合わせてどんどん新商品を出します。しかし『キンプリ』に合わせてプリティーリズムの新弾が稼働するなんてことはありません。もちろんプリパラとのタイアップもありません。プリパラの筐体で大和アレクサンダーが使えたりなんかしません。

 これはつまり、「映画を公開しても映画の興行収入以外での大きな収入が見込めない」ということです。

 

「男性キャラクターをメインに据えて」
「映像企画・製作会社が企画した」

 『キンプリ』は西さんが社内会議にてオバレの3人がメインの深夜アニメの企画を提出したことが始まりです。そもそもおもちゃメーカーからの企画ではない。ホビー原作アニメなのに。

 そして『レインボーライブ』は男性キャラクターが物語の主軸としてどんどん前に出て来るという点で女児向けとしては異質ですが、『キンプリ』はほぼ男性キャラクターしか出て来ません。

 女児向けアニメは、女の子が主人公なのが基本です。その女児向けアニメに登場する男性キャラクターをメインに据えるならば女児ではない層に向けて展開する、つまり深夜枠での放送。理に適っているように見えますがそもそも女児向けアニメを見ている「大きなお友達」の人口がそう多くない(これについては第二部で)のに、西さんは思い切ったことをしたなあ……と思います。しかしそこから様々な積み重ねを経て『キンプリ』に繋がっているのだから西さんに足を向けて眠れません。

 

「3年前(公開当時)に放送終了した女児向けアニメの」
「女児向けではないスピンオフ劇場用映画」

 ホビー原作アニメの続編はホビーの売れ行きにかかっている、という話を先ほどしました。つまりホビーの展開が終了したら、普通はもう続編の制作も放送も期待することはできません。

 女の子達をメインに据えている女児向けコンテンツの場合は男性ファンからの支持を得ていることが多いため、アニメが終了しても何らかの形で展開を続けることもあります。プリティーリズムの場合は「プリシェイ」という『プリティーリズム』シリーズのキャラクターと楽曲が登場するリズムゲームが配信中です。

 プリティーリズムの場合、後継作品である『プリパラ』がゲーム・アニメともに好調な展開をしています。最も大きなお客さんである「女児とその親御さん」は現在そちらに向いています。つまり、『レインボーライブ』の場合、続編を作ろうとしてもお客さんが「大きいお友達」しか見込めないのです。

 また、キッズ向けアニメの正統なる続編をホビー系タイアップ無しで、そして収益がきちんと見込める形で作ろうと思った場合、その当時子供だった人達が自分でお金を稼いで払う事が出来るようになる時期まで待つ必要があります。その期間は普通だいたい15年くらいでしょうか。

 しかし『キンプリ』の場合、『レインボーライブ』最終回からまだ3年しか経っていない時点での公開です。『レインボーライブ』最終回当時7歳だった女の子もまだ10歳です。

 プリパラが好調という事情もあって、『キンプリ』は『プリパラ』から幼い女の子のお客さんを取ることがないようにと、競合を避ける事をマーケティングの際は最優先にしていたようです。実際、『キンプリ』の公開発表直後に公開された映画『とびだすプリパラ み〜んなでめざせ!アイドル☆グランプリ』に『キンプリ』の予告編は流れませんでした。

 「本来女児向けに制作されていたアニメの登場人物をメインとして女児向けではない作品を作る」という事が相当なチャレンジです。キッズ向けコンテンツ原作なのに、キッズに向けて作っていないからです。『キンプリ』の場合、グッズも公開当時に劇場用グッズなども販売されていたり販売予定が発表されていたりはしましたが、グッズのアニメ制作元への利益還元率はそう高くありません。円盤の発売予定も初めはなく、ほとんど興行収入でしか収益を見込むことしか出来ないのです。

 イベントやインタビュー記事で菱田正和監督や西さん、タツノコプロの依田健プロデューサーらが語っているように、本当に崖っぷちの状況の中で作られた作品だということは察するに余りあります。

 

 「キッズ向けコンテンツ原作としての『キンプリ』」がいかにとんでもない作品なのかお分かりいただけたでしょうか。

 続いては第二部にて、「男性キャラ中心歌ものコンテンツとしての『キンプリ』」のお話をしようと思います。

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キッズ向けコンテンツに不慣れな人向けFAQ

キッズアニメ

以前Twitter上にて一部公開してそのまま書くのをやめたのですが、なんとなく完成させました。今後書き足すかもしれません。

キッズ向けコンテンツ、キッズ向けアニメは隠れた名作が多いです。「子供向けだし……」なんて言ってスルーしているのは少しばかり勿体無いです。あなたも是非キッズ向けコンテンツの世界に足を踏み入れて見てください。

 

そしてこのFAQは、キッズ向けコンテンツに足を踏み入れてみたけど、他のオタク向けジャンルと勝手が違いすぎて分からない……という方に向けて書いています。

厳しいことを書いているように見えるかもしれませんが、キッズ向けコンテンツにハマってしまうと大変な事も多いけど、慣れてしまえばその大変さもエンターテイメントになってとっても楽しいよ!というのが私のスタンスです、一応。

キッズ向けコンテンツは怖くないよ、とっても楽しいよ。

 

~買い支え・コンテンツに貢ぎたい編~

Q. アニメが面白いんだけど、円盤は出ないの?

A. 出たり出なかったりですが、レンタルが出てもセルは出ないことの方が多い気がします。出たとしてもDVDの場合がほとんどです。Blu-rayなんぞ高確率で出ないと思ってください。

ネット配信は最近だとどのアニメでもちゃんとやります。

Q. じゃあどこから利益を得ているの?

A. おもちゃやカードでしょうね。

Q. じゃあおもちゃを買い支えれば二期が……

A. キッズ向けコンテンツというのは、子供受けして子供や子供の親におもちゃなどを買ってもらわないといけない世界です。
TCGトレーディングカードゲーム)原作の場合大人の買い支えも大きな力になりますが、おもちゃ原作の場合そうも行きません。あなたが良い年した大人である時点であなたが買い支えても意味は薄いと心得てください。

それでも買い支えたいと思うなら思う存分買い支えればいいのです。大きいお友達への需要を関知した公式側が何らかの展開をしてくる可能性もあります。(キッズ向けとしてのそれの良し悪しはともかく)

Q.キャラグッズは出ないの?

A.アニメイトに置いてあるようなキャラグッズのことを指しているなら、出ないと思った方がいいです。ただしジャンルによって状況は大きく異なります。以下に大雑把にまとめました。


TCGや筐体カードゲーム原作→スリーブやデッキケース、ストレージボックス、ファイルのようなカード周りのグッズがキャラの絵入りで出たりする。また、大きいお友達を視野に入れていることもあるのでキャラグッズが出ることもある。


女児向け→筐体ゲーム原作作品が最近強いので上記のものと状況はだいたい同じ。作品によってはフィギュアとかもガンガン出してきたりする。ぬいぐるみはほぼ確実に出る。


男児向けホビー原作→まあキャラグッズがなくても食玩やカード、文房具、おもちゃがあるからむしろそれでいいではないですか。

Q. 買い支えたのに終わった……

A. キッズ向けコンテンツにおいては、子供の反応が全て。子供に受けが悪く親御さんがお金を出してくれなければどんなに面白くても終わります。悲しいことですが、よくあることです。

 

~イベント編~

Q. 声優が豪華ですが、イベントはやらないんですか?

A. おもちゃ関係のイベントの一環としてトークショーをやることはあります。

TCG関係は特に声優をカードゲームの大会に招待してステージをやることが多いです。

Q. おもちゃ関係のイベントっていうのはどんなもの?

A. 「次世代ワールドホビーフェア」が代表格なので、まずそちらについて。おもちゃやゲームの試遊が出来たりおもちゃの大会をやったり、時には主題歌を歌うアーティストがミニライブをやったりと毎年非常に盛況になるイベントです。ただし基本的にあらゆるものが中学生以下限定です。高校生以上でもゲームの試遊が出来たり特典を貰えることはあるので、不慣れな内は自分が何が出来て何が出来ないかを事前に確認することをお薦めします。

他には、池袋サンシャインシティのような催事場やショッピングモールの一角を用いてイベントが行われる場合もあります。

Q.それ以外にイベントはあったりしますか?

アニメの主題歌を歌ったアーティストがライブを行う際にファミリー席を設ける事例があります。特にアニメの為に結成されたユニットの場合はそのユニットのライブもそのコンテンツのイベントのようなものなので、子供も多く来場します。

また、女児向けアイドルコンテンツになるとライブイベントは必ず開催されます。その場合もファミリー席は必ず用意されます。

~その他編~

Q. 続編が日本でテレビ放送されず、海外でしか放送されていないようなのですが……

合法的な視聴手段が存在する場合→ネット配信の場合英語だったりギリシャ語だったりするでしょうが、合法的な視聴手段が存在するならちゃんとその方法で見ましょう。また、日本語版を「未放送話」として円盤収録したりネット配信してくれるところもあります。

 

合法的な視聴手段が存在しない場合→諦めましょう。「どうしてもあらすじは知りたい」方向けの主な主な手段を以下に列記します。

  • 英語で作品名+日本放送されていないシリーズのタイトルをGoogle検索
  • 4chan(海外の掲示板サイト。日本で言う2ちゃんねる)を見る
  • 海外のファンサイトを見る。
  • Wikipediaのその続編が放送されている国の言語のページを開き、「Plot」「Episode List」の項を読む。

Q. 原作者やアニメーターが勝手に炎上します

A. キッズ向けコンテンツに限らず稀に良くあることです。諦めてください。

Q. なんでイベント参加や無料で貰えるグッズに年齢制限があるんだ!こっちも客なんだぞ!

A. その疑問を抱いてしまった時点であなたはキッズ向けコンテンツに壊滅的に向いていません。

 

(※作品、原作コンテンツによります)